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東京地方裁判所 昭和27年(行)152号 判決 1954年7月15日

東京都北区赤羽一丁目三百八十三番地

原告

谷口宗一

東京都北区中十条四丁目七番地

須玉正男

東京都北区王子三丁目十七番地

南木幸七

東京都台東区竹町六十番地

井上由雄

右原告四名訴訟代理人弁護士

青柳盛雄

小沢茂

佐藤義弥

右訴訟復代理人弁護士

池田輝孝

柴田睦夫

東京都千代田区大手町一丁目七番地

被告

東京国税局長

渡辺喜久造

右指定代理人

横山茂晴

堺沢良

国吉良雄

大滝浩

飯島宗三

右当事者間の昭和二十七年(行)第一五二号課税処分取消請求事件について当裁判所は次のとおり判決する。

主文

原告等の訴を却下する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

事実

原告等訴訟代理人は被告が昭和二十七年五月二十一日附をもつて原告谷口宗一に対してなした昭和二十五年分総所得金額を三十八万四千二百円と訂正した課税標準額決定のうち二十一万八千二百三十五円を超過する部分、原告須玉正男に対してなした昭和二十五年分総所得金額を十六万二百円と訂正した課税標準額決定のうち十二万七千百円を超過する部分、原告南木幸七に対してなした昭和二十五年分総所得金額を二十万六千九百円と訂正した課税標準額決定のうち十二万円を超過する部分、被告が昭和二十七年五月二十九日附をもつて原告井上由雄に対してなした昭和二十五年分総所得金額を二十七万八千九百円と訂正した課税標準額決定のうち十三万円を超過する部分はいずれもこれを取消す、訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、その請求原因として、

(一)  原告谷口宗一、須玉正男、南木幸七は夫々王子税務署長に対し、又原告井上由雄は下谷税務署長に対しそれぞれ昭和二十五年分所得税に関し確定申告として次表申告金額欄記載の金額を総所得金額として申告したところ右各申告に対し原告谷口、須玉、南木に対しては王子税務署長より又原告井上に対しては下谷税務署長よりそれぞれ次表更正決定の年月日欄記載の日附をもつて総所得金額を更正決定の金額欄記載の金額に更正する決定をなしその旨各原告等に通知した。

<省略>

(二)  原告等は右更正決定を不服とし、原告谷口、須玉、南木は夫々王子税務署長に、原告井上は下谷税務署長に再調査の請求をしたが、その請求を受けた税務署長から原告谷口、須玉、井上については再調査請求棄却、原告南木については再調査請求却下の決定があつた。

(三)  これに対して原告等は更に被告に審査請求をしたところ被告は次表の決定年月日欄記載の日附をもつて決定内容欄記載のとおり決定し、該決定の通知書を原告等はそれぞれ通知受領欄記載の日に受領した。

<省略>

(四) 然しながら原告等の昭和二十五年分の総所得額は当初申告した通りであり、東京国税局の前示決定は右申告額を超える部分につき違法であるから各超過部分の取消を求めるものであると述べ、証拠につき谷乙第一乃至第四号証須乙第一乃至第四号証、南乙第一乃至第四号証、井乙第一乃至第四号証の各成立は認めるが井乙第五号証の成立は不知と述べた。

被告指定代理人は原告等の訴を却下するとの判決を求め、審査決定の取消又は変更を求める訴は審査決定の通知を受けた日より三月内に提起することを要するものであるところ被告は原告等主張の日附当日審査請求につき決定をなし原告谷口、須玉、南木に対しては王子税務署長をして同年五月二十三日、又原告井上に対しては下谷税務署長をして同年六月三日右各審査決定通知書を発送せしめた。されば右審査決定通知書は遅くも原告谷口、須玉、南木に対しては同年五月二十五日、原告井上に対しては同年六月五日には到達しているに拘らず、原告等は右到達後三月の期間経過後の昭和二十七年十月七日に至つて本件訴を提起したものであるから原告等の本件訴は法定出訴期間後になされた不適法のものとして却下せらるべきであると述べ、

立証として谷乙第一乃至第四号証、須乙第一乃至第四号証、南乙第一乃至第四号証、井乙第一至乃第五号証を提出し、証人秋本正義、三反崎ます子、竹井英夫、鬼久保一郎、二木香の各証言を援用すると述べた。

理由

成立に争ない谷乙第一号証、須乙第一号証、南乙第一号証、谷乙第二、第四号証、証人二木香、同鬼久保一郎の各証言を綜合すれば東京国税局長が原告谷口、須玉、南木に対する昭和二十五年分所得税に関してなした審査決定の決定書は昭和二十七年五月二十二日遅くも翌二十三日各原告宛に王子税務署長から普通郵便に付して発送されたことが認められ、又成立に争ない井乙第一、第二、第四号証、証人三反崎ます子、竹井英夫の各証言を綜合すれば東京国税局長が原告井上に対する昭和二十五年分所得税に関してなした審査決定の決定書は昭和二十七年六月三日同原告宛に不谷税務署長から普通郵便に付して発送されたことが認められる。従つて右郵送につき到達に関して疑惑を起こさせるような特段の事情を認め得る証拠のない本件においては右各審査決定書は遅くも通常到達し得る期間内には各原告等に到達したものと推定するのが相当である。ところで審査決定の取消又は変更を求める訴は審査決定の通知をうけた日から三箇月の期間内に提起しなければならないことは所得税法第五十一条第二項に規定するところであるが、原告等が本訴を提起したのは昭和二十七年十月七日であることは当裁判所に明らかであるから、原告等の本件訴は法定の出訴期間経過後に提起されたもので不適法として却下せらるべきものである。よつて訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 毛利野富治郎 裁判官 桑原正憲 裁判官 鈴木重信)

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